恐怖と欲望のガールズライフ

えーえんと勉強中。基本的に読書や映画の記録。

備忘録(映画)

定期的に書かないと備忘録すら忘れてしまう。

 

映画

ダニー・ボイル監督『イエスタデイ』

世界中が停電した夜、ビートルズが消えてしまった!レコードもなく、検索にも引っかからない!ということは、自分の曲だとして歌ってもいいのでは……?というイギリス映画。エド・シーランが本人役で出ている。ビートルズの名作がこれでもかと流れてそれはそれで楽しいのだが、いくつか疑問点が。まず主人公のジャックを演じるのはインド系イギリス人のヒメーシュ・パテル。そのジャックがビートルズの曲を次々と思い出しつつ歌って世界中で大ヒットするのだが、インド系の出自に関しては一切触れられない。最初の舞台はイギリスの海辺の田舎町で、現実的に考えると、そういう場所で差別がないとは思えず、本作ではそうした緊張感がなにも描かれないのだ。外国にルーツをもつ俳優が、常にマイノリティの役を与えられるべきだとは思わない。むしろ常にマイノリティの役しか与えられないというのも、ステレオタイプだろう。が、マイノリティであるという現実はたしかにあるのであって、そこがまったく描かれないのは、リアリティを欠いているように思う。あと、EDMとヒップホップ全盛の現代において、ビートルズの楽曲が果たしてこんなにヒットするのか、というのも疑問。ビートルズのファッションについても言及なし。ただ!ここからはネタバレになるので書きませんが、未来だからこそのうれしい演出もあった。

 

トッド・フィリップス監督『ジョーカー』

バットマンシリーズの悪役ジョーカーの生い立ちを辿る映画。そのアメリカンな出自にもかかわらずヴェネツィア映画祭金獅子賞を受賞。なんといってもホアキン・フェニックス!亡きリヴァー・フェニックスの面影を求めて観続けてきた役者の怪演が観られてとても満足。ラストシーンに対する解釈はわりとどうでもいいのだけど、その追い詰められていくさまが悲しくて悲しくて。恋人、両親、社会福祉、友人、社会のつながりがどんどん断たれるなか、他殺ではなく自殺を選ぶのはその人の倫理観や道徳ではなくて、ただただ環境やタイミングなのだと思わせられる。

巷で話題のインセルなのかと思いながら見ていたけど、そうでもなかった。北村紗衣さんのブログがとても参考になった。

saebou.hatenablog.com

あまり音楽がわからないわたしとしてはアーサーがジョーカーの衣装をまとって階段を下りてくるシーンはとてもかっこよくて鳥肌がたったし、細かな演技がとても好きだった。肩を丸めるしぐさとか、踊るときに指の骨がごつごつしているところとか。つまりホアキンが好き。

 

新海誠『天気の子』

数人におすすめされたので観たのだが、びっくり。無。虚無。なにも感じなかったし、なにも残らなかった(おすすめされた人たちに言ったら、「観なかったほうがよかったね」と言われた。理不尽!)。ヒロインの陽菜がとてつもない能力を持っているにもかかわらず受動的なのが気になって、ジェンダーバイアスかかってんなあと思いつつ観て、まあそれは新海誠だしどっちでもいいくらいだったんだけど、終始主人公たちが14歳とか16歳とかだったのに、きちんと守られるべき大人に守られていないのがもうだめだった。小栗旬、警察を止めるんじゃなくて一緒に屋上上がれよ……とかどうでもいいところで立ち止まってしまった。あと端的に、雲の上でずっと暮らせばよくない?居心地よさそうだし地球もハッピー(と言って怒られた)。

 

タル・ベーラ監督『サタンタンゴ』

ただひたすらの長回し、7時間。映画はゴダールだろうが小津だろうが、2時間ほどで違う世界に行ってきて帰ってくる、エンターテイメント要素があるものだと思っていたのが覆された。時間間隔を変容されるほどの長い時間、わたしはただひたすらハンガリーの田舎村の傍観者であり続けた。でも不思議に疲れは感じなかった。

 

是枝裕和監督『真実』

カトリーヌ・ドヌーヴジュリエット・ビノシュ共演というだけで、もう、よだれが出てしまう(女優が女優を演じる映画が好きなことに気づいた。オリヴィエ・アサイヤスの『アクトレス』も好きだった)。内容は軽め。軽快なやりとり、親子の確執、深い絶望もなければ大それた救いの感動もなし。子どもと動物のアドリブもあり。